犯人誘導 【酔いどれ刑事の事件簿 二】

プロローグ

　
　千葉県千葉市中央区。

　ＪＲ千葉駅から、東京都内に向かう総武線。千葉市内から習志野市・船橋市・市川市を通過し都内江戸川区へ。

　その沿線にある鉄道警察の捜査員は、ある一人の男に頭を悩ませていた。その男は、県内の総武線以外にも、私鉄各線にて痴漢行為を行っている。

　痴漢行為は、現行犯でなければ特定が難しい。被害者は、大人しそうな女性が狙われるケースが多い。その為、泣き寝入りする事で事件が発覚しない事もある。

　例に漏れず、その男もそのような女性を対象にしていた。その男が未だ逮捕に至らず、捜査員に目を着けられている。

　それは、数件の通報があったから。

　その通報によると、男は騒ごうとした女性に対し金を渡した。その上、痴漢裁判における女性が受ける精神的なダメージを囁いたと言う。それが、多路線に渡り通報された。

　通報してきたのは、おそらくその様子を見掛けた正義感の強い男性。