プロローグ

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   だが、女性からの被害届は一件も無い。  ただ、数件の通報の内容が酷似している。それにより、同一犯による犯行だと鉄道警察では判断し動き始めた。  しかし、捜査は思うよりも難航した。  鉄道警察からマークされるような痴漢は、常習性が高く一定の路線に一定の時間に乗り込む。そして、特定の女性を狙うケースが多い。  だが、その男は路線も時間も不特定。当然、対象にする女性も一度きりで。マークしようにも、絞り切れないというのが現状であった。 「こうなると、パトロールで偶然引っ掛かるのを待つしかないか」 「被害者の全てが通報してくれたら。何かのパターンや法則性をデータ化して、捜査員を配置出来るのに」 「被害者女性に、それを望むのは酷だ」 「だから、その痴漢が調子にのってるんだろうが」  女性専用車両とて、一日中運行している訳では無い。そして、通勤時の利便性の高さは望めない。
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