第Ⅰ話:白の仮面

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「はい、どーも。白仮面です!」  机と椅子と本棚しかない寂しすぎる部屋の中心に、一人の棒人間が立っていた。  顔には『白』と書かれていて、あとは口がついているだけである。  そんな棒人間が、先ほどからずっと独り言を言っているのである。 「はい、どーも。白仮面です!」  それに対して、冷たい視線をおくる一人の男がいた。  その男は、学生服を着ていて、黒いシルクハットをかぶっていた。  名前は、ひろし。ポスターのひろし君である。  なんでポスター?そう思った人も少なくはないだろう。  何故かというと、理由はいたって簡単である。それは、彼が本当にポスターだから。ポスターの中に閉じ込められている存在だからである。  しっかりと、セロテープで壁に貼り付けてある。 「……お前、なにやってんだ?」  そんなひろし君が、ついに棒人間に声をかけた。  眉間にはシワがよっている。どうやら、我慢の限界だったようだ。 「え?自己紹介の練習だよ、練習。この世の中、いつ名前聞かれるか分からないだろ?だからだよ」 「……そうか」  ひろしは、興味のない顔をしていた。もう少し面白いことを言ってくれることを期待していたのだろう。  独り言の内容からすると、この棒人間の名前は白仮面というらしい。  よく分からない棒人間に、しゃべるポスター。  もう話しについていけなくなってしまった人も少なくはないだろう。  ……無理もない。
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