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薄暗い路地裏に立っていた。
空は今にも雨が降りそうなくらい暗く、重かった。
ふと、少女のか細い声が聞こえた。
「石はいりませんか…石は…」
少女は金髪の肩くらいの長さの髪に、ワンピースの上に赤い薄汚れたエプロンを巻き、靴は履いていなかった。
「あの…すみません」
少女は不思議そうな顔をしてこちらを見た。
「ここはどこですか?」
「…」
「ごめんなさい、いきなり聞いて。私、この町来たの初めてで…」
「ここはインビジブル」
少女は無表情でそう答えた。
「そう、ですか…」
「本当の名はシャンデリア。インビジブルというのは通称。そちらを言った方がわかるかと思って」
「え、えーっと」
「何も知らないんですね」
会ったときからにこりともしなかった。
けれども眼差しは優しくて暖かい感じがした。
口調は冷淡。
容姿からは想像も出来なかった。
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