勘違いしないでよね!

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「この町は、少し前まではとても栄えていたとてもきれいな町だった。誰もが羨み、ここに住みたがった。だからシャンデリア。シャンデリアみたいに輝かしい町だった」 「だった?」 少女は深い溜め息をついた。 「そう。どう見てもこの町が栄えているなんて見えないでしょう」 周りを見渡してみる。 ここは細い路地裏だった。 たくさんの怒声や叫び声、鳴き声。 近くには数人の人がうずくまっていた。 「あの人たちは?」 「住むところがなく、飢えている人たちでしょう。この町はね、今ではもう最悪の町なのよ。治安は最低、この町では毎日人が死んでいく。飢えに最後まで苦しんで、死んでいく。それが当たり前の町」 「…」 「もうこの町に住みたがる奴なんていない」 「そ、んな…」 「あんた、どっから来たの。この町のこと何も知らない。飢える人たち凍え死ぬ人たちを知らない。どっから来たんだよ」 「え、私…」 「ねぇ、あなたこそどこから来たんですか?名前は?」 「は?あたしが聞いてるの。まさか、知らないの?どこから来たのかも、名前も」 図星だった。 私は少女の顔を見つめた。 「はぁ。呆れた。まあいいわ。私はこの町で生まれ育った。名前はミリア」 「そう、なんだ。あ、ねぇ、どうしてこんなところで石を売っているの?」 「そうしないと、いけないから」 「え?」 「いいから、そうしろと言われたから」 なんだか、よくわからない。 「だれに?」 「いちいちうるさい。どうして私のことそんなに知りたがるわけ?そんなこと知ってあなたになんの得があるっていうの?」 「別に得はないけど、知ったっていいじゃない。せっかく知り合えた。友達になろう」 「何を言っているかよくわからないわ。友達になってどうするの?何?メリットはない」 「あるよ」 「は?」 「友達っていうのはどんなに辛いときでも、それを一緒に分け合って、一緒に乗り越えていくものなんだ。隠し事は絶対なしだし、楽しいことも二人で分かち合う」 そういうとミリアは腹を抱えて笑い出した。 しかし一瞬で真顔に戻った。
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