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ご主人様に言われる場所を見れば、僕と同じように席に着いていて、その上服をきっちり着ているも、カレーを食べながらぎこちない動きの女性がいる。
「ひぅ…はぁ……ごしゅ、じん…さま」
女の人特有の喘ぎとも言える声。その人の前にはお世辞にも顔立ちがいいと言えない、肥満さが目に見えた頭の禿げた男がにやにやとしながらカレーを食べている。
「ほら、喘いでないでカレーを食べんか。他の奴隷と違って食べられるんだ。わしの奴隷でよかったなぁ」
吐き気のする笑い方。もし、ご主人様でなくあの僕を見定めしていた男に買われていたらと思うとぞっとする。でも、もしかしたら未来にありえるかもしれない。
ご主人様の弟かわからない今、ずっとご主人様の側にいられるわけじゃない。
鵺「あまり見るなよ。気分が悪いだろ」
夢「はい…」
奴隷の現実。そういうものが目に見えた気がした。
「お待たせいたしました。ロースカツカレーでございます。こちらが辛口、こちらが甘口となります。」
鵺「夢には甘口がいいだろう。ほら、食え、夢なんだろ?」
「え…」
鵺「てめぇまだいたのか、水無月の名はわかってんだろ?殺されたくなきゃ、さっさと次の仕事しやがれ」
「は、はい…!」
鵺「邪魔者もいなくなった。食ってもいいぞ」
夢「はい…」
まさか本当に僕のカレーだったなんて夢みたいだ。恐る恐るロースカツを一口サイズのスプーンで切り、カレーと一緒に口に入れれば、ポロッと涙が出る。
鵺「美味しいか?」
夢「こんな…っおいしいの、はじめてです…っ」
一口食べただけで満足できるそんな美味しさ。初めて叶った夢。奴隷である僕に夢を与えてくれたご主人様。
弟じゃないかもしれないのに、こんな優しいご主人様に会えたことがとても嬉しい。この事はきっと一生忘れない思い出にしよう。
奴隷だって結局は人間。思い出くらいは持ちたいなんてことをカレーを食べて思わされてしまった。
鵺「辛口食べてみるか?」
夢「いいんですか?」
鵺「ああ、口開けろ」
言われた通り口を開ければ、ご主人様が使われていたスプーンで辛口というものを食べさせられる。
夢「か、かりゃい…」
鵺「ククク…ッ夢には辛かったか」
夢「す、すみましぇん…」
辛くて涙目になる。これが辛口……僕には甘口の方が美味しい。普通に食べちゃうご主人様が凄い。
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