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「奴隷、次そこ掃除しとけよ」
夢「は、はい!」
昨日は結局お風呂を一緒に入ることを強いられ、入った後、見定めのようなことをするかと思いきやただ寝るだけでその日は終わった。そして今朝、ご主人様は申し訳なさそうに家を出たのが1時間前。
早い時間に仕事というものがあるようだ。だから早めに寝たのかと納得した。
そしてぼーっと歩いていれば一人の男性に連れられ、奴隷なら旦那に言われずとも仕事をしろと言われ、それもそうだと思い、掃除を始めたのが数分前。
男性はただ何もせず指示をするだけ。この人もするべきではないのかと思うが、奴隷としては言い難く、ただ従う。
「次は皿洗いな」
夢「はい」
広い広い屋敷を掃除した後の何枚あるか数えきれない皿洗いは何気に辛いと思いながらに洗う。皿洗い自体初めての経験。中々進まない僕に男性が苛々しているのがわかる。
「おっせーんだよ!」
夢「すみません」
それなら自分も手伝えばいいのになんて思う。奴隷なのは認めるが、今思えば、別にこの人間が主人なわけではないから、従う必要はない。
ただ、何もせずご主人様を待つというのはあまりにも奴隷としての自覚に欠けるようで、それが嫌でやっているだけ。……なのは半分くらい嘘だ。実際家事という初めてすることを楽しんでいた。
うまくいかないことがほとんどだが、ご主人様のためだと思うと楽しいし、ただ何も考えずできるそれが勉強みたいで至福が戻るような感覚だ。忘れてはいけない奴隷というものを忘れてしまいそうなくらいに。
そういう意味ではこのうるさい男性に、僕は感謝していた。そして最後の1枚の時、誤って1枚の皿を割ってしまう。
「な、何してんだよ!」
夢「すぐ片付けます」
「おい、バカ…!」
夢「……っ…」
「素手でやったら怪我するに決まってんだろ!」
割れた皿の扱いは初めてだから正直怪我をするなんて発想はしなかった。それでも人指し指から血が出るだけで問題はない。いや、床に落とすわけにはいかないからどうにかしないといけないという意味で問題か。
なんて思いながら、割れた皿と怪我した人指し指どちらを優先すべきか悩んでいれば聞き慣れた声がした。
鵺「何をしている」
「わ、若旦那!」
夢「おかえ…」
鵺「いないと思えば何故こんな場所に……。それに怪我までしたのか」
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