監禁と誘拐

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-by.泉- なんてことだろうか……。夢は確かに最後に呟いた。寂しかった……と。 兄2人を地獄から逃がしてくれた天使の子。すぐ助けようにも自らの事情ですぐには助けられなかった。 夢はまだ小さい子供だったというのに、あんな父を傍にしても恐怖しかないというのに。俺達兄は自分の都合しか考えなかった。 夢は自分を犠牲にして助けてくれたのに。我慢して我慢して我慢しかできなくて、1番楽なのが兄を忘れること、奴隷だからと理由をつけることだったに違いない。 兄を求めるから辛い。同じ人間なのに痛い目に合うと考えてしまうから苦しい。 これなら確かに認めたくなるじゃないか。奴隷を。自分は奴隷だからこうなんだと認めてしまうじゃないか。 泉「夢……ごめんな」 夢「………」 気を失ってしまった夢に近付いては抱き上げる。これはきっと逃げてしまった俺への罰なのだろう。 本当の兄弟になりきれてないのを理由に逃げた俺への…………。 東「泉様、どうされますか?」 泉「夢を寝かせよう。眠りが1番の安らぎだろうからな。後、鵺燈を呼べるか?」 東「……大丈夫です。死んででもお連れします。」 泉「ありがとう」 死んででも……か。東ほど俺に尽くす奴はいない。優秀な東は俺なんかにどこまでも尽くしてくれる。 こんな弱い俺に……。 東「泉様、血の繋がりだけが兄弟ではないですよ」 泉「……いつも聞いてる。早く行け」 東「はい」 会う度、話す度に言われる言葉。でもそれにどうしても納得がいかないからわかっているとは言えない。 繰り返し言う東は、きっと俺を励ましているんだろう。それでも鵺燈と夢に名前をつけただけじゃ満足しない俺は気にしすぎて聞き入れられない。 泉「夢……お前は……」 俺が、俺だけが腹違いの兄弟で、兄弟だと認められたいばかりに、俺だけに優しかった父から暴力を自ら頼んで受けていたと言えば軽蔑するか? そのせいで虐待が悪化したと知ったら俺を嫌うか……?
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