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-by.泉-
東「鵺燈様はすぐ来ると思われます」
泉「そうか…」
東「泉様……もうそろそろいいのではないですか?」
泉「何がだ?」
東「分家の当主ではなく、本家の当主となることです」
泉「本家ね……」
東「何故躊躇うんですか?確かに鵺燈様も優れてはいます。ですが本家の血を継ぐ貴方こそ……!」
泉「俺は弱いんだよ。だから母親を殺した本家は許せない。分家になったのはそのためだ。それにあちらも承諾している。俺は本家が嫌いだ。母親を殺し、父を壊した本家が……本当ならその原因となる夢と鵺燈だって恨んでよかった。だけど……無理だったんだ。」
東「泉様……」
泉「自分を頼ろうとする姿とか、弱々しい姿とか見てたらどうでもよくなって、可愛がってしまった。父さんの気持ちも知らずに。俺が2人を憎めば、父さんの気持ちに気づいていれば、兄弟に近づこうなんて考えなければ変わっていたのかってたまに考えるよ。」
東「……すみません。知っていながら……」
泉「いいんだ。東は俺によく尽くしてくれてるから。でもごめん、俺は本家の当主にはなれない」
東「………」
東は本当に頑張ってくれた。俺に尽くした理由も知っている。だけど、計算違いだ。
東「殺してやる……」
俺を当主にして自分もえらい位につこうなんて。
泉「いいよ」
東「!」
泉「知っていたから。東が今の地位に満足していないのは。鵺燈の隣じゃいつまでたっても不安定。養子だから、いつ誰かに代わってもおかしくはない。その上、家の跡継ぎとしての興味本位がなく家の崩壊を気にしない。だけど俺なら?俺が当主になって東を隣に置けば、東は安定した地位。血の繋がりに勝てるものはいない。血の繋がりもある分、家の崩壊も気にするから安泰だ。それを狙ってたんだろ?」
東「何故知っていながら……」
泉「知っていたからだ。危険人物を鵺燈と夢の側には置いておけない。今回夢をここに連れてくるよう頼んだのは、鵺燈のした夢の監禁もそうだが、本当は東を誘拐犯に仕立てあげて始末させる気でいたからだ。」
東「…どこまでもバカですね……2人のためなら、自分が殺されてもいいと?そして本家が嫌いだからなれる地位を捨てる?どこまで私をバカにすれば気が済むんだ!」
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