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-by.鵺燈-
バタリと人が倒れる。それは裏切者の東。
来たとたんに見えた、いるはずの夢と、いるとは思わなかった兄貴の存在に、咄嗟に銃が出た。恐らく東は即死だろう。
苦しませてやるつもりが楽に殺してしまった。まぁ、夢が守れたならいいが。
それよりも………。
鵺「兄貴……何故ここに?」
泉「俺が……泉だ、よ」
怪我を痛そうにしながら、夢から離れる兄貴。痛いだろうに俺に向き直れば、苦しそうに笑顔を見せる姿は変わらない。
鵺「夢に怪我は……」
泉「大丈…夫。しっかり、守った、から」
泉と言う名はあえて無視して話を進める。分家の当主である泉をどうしてやろうかと考えていたが、相手が兄貴とわかったとたんその気も失せたからだ。
何より、夢を命懸けで守っていたのは見てとれた。きっと何か理由があったんだとすんなり受け入れられた。
泉「う……っ」
鵺「兄貴!おいお前ら!入ってきて早くあに……いや、泉を屋敷に運べ!怪我人だから丁寧にな。夢は俺が運ぶ。東の死体も後始末しろ!」
待機していた部下たちに大きく命令に出れば、ぞろぞろと部屋に入り行動に移す。
俺は未だに目を閉じたままの夢を抱えてその場を後にし、1つ電話を入れて屋敷に向かうため運転手の待つ車に乗った。
鵺「何度も悪い」
「構わないよ。電話もくれたしね。それに鵺燈くんも、もう大丈夫そうだから安心したよ」
鵺「何のことだ?」
何のことかはわかるがあまり思い出したくはない。夢を殴った記憶なんてものは。
「うーん、わからないならいいんだ。おや、夢くんの頬すっかり治ってるね」
鵺「ああ」
この医者はわざとなのかと思うが、水無月家に通じる医者はこいつくらいだから、多少は我慢しなければならない。
「さて、話はこれくらいにして、診断しないとね。見た感じでは眠っている……というより、気を失っている感じがするね。取りあえず病室のベッドに運んでくれるかい?前と同じ場所でいい。精密な検査は起きてからでもいいだろう」
鵺「わかった。ああ、忘れる前に言っておくが、電話で話した通り、後1人怪我人が来る」
「鵺燈くん、夢くんのお兄さんだな、了解」
そんな話をしていれば、タイミングよくバタバタとした足音。
鵺「来たみたいだ。頼む」
「即死以外なら助けられる。期待して待っててよ」
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