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-by.夢-
飛び散る血、笑う兄と目を見開かせたまま後ろへ倒れていく兄。
一瞬でありながらゆっくりに見えるその情景は確かに僕は見覚えがあった。僕は何人も死んでいく人を見てた。
その犯人が兄であることを知っていた。そして、全てを狂わせた人間も知っていた。
長男でも次男でも、父でもない。全ては僕の責任で、それ以上に…………祖父のせいだ。
何故忘れたのだろう。何故思いだそうとはしなかったのだろう。僕は最初から知っていたのに。
泉お兄ちゃんさえも知らない真実を。この複雑な家族の本当の姿を。
僕1人の存在がきっとみんなを狂わせた。
鵺「夢、これで笑えるか?」
夢「………うん」
ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんは確かに狂ってるけど誰よりも優しいのを僕は知ってるよ。
“他人”とも言える僕を、“家族を引き裂いた”とも言える僕を、唯一貴方は愛そうと、笑顔にさせようとしてくれた。
本当の家族に本当の家族だということを忘れられても愛そうと愛そうとしてくれた。時には殴られたこともあった。
あれは記憶の上書きと思っていたけどそうじゃない。本当の家族でないと認識された瞬間に、お兄ちゃんも僕と同じ立場になった。それでやりきれなくなって混乱した結果があれだったのだと今なら思える。
優しすぎるお兄ちゃんは、本当の家族に見限られ、僕を愛する以外の術を失った。だからストーカー行為が始まったんだ。
お兄ちゃんは僕以上に僕を知り、双子の僕らを見分けた。でもそれが当たり前。
だって僕だけが本当の家族ではないのだから。元々双子なんて存在はしない。ただ姿形を似せただけの人形。
でもあまりに僕と双子になった兄と次男のお兄ちゃんは僕に優しかった。だから僕は甘えてしまった。
それが死を招き入れるなんて思いもしないで。
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