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元々の始まりはこうだ。泉お兄ちゃんたちの父、隆司さんの許嫁を隆司さんが無視して、分家の娘と駆け落ちしたことから始まった。
許嫁がいながらの分家の当主の娘との恋。本来ならありえないということでもなかった。
寧ろ水無月家としては本家と分家の次期当主の娘と息子が許嫁になるのが伝統である。
そしてその間から生まれた子を本家の子とし、分家の子は本家の次期当主の異性であることを条件にして本家の当主に分家の当主を選ばせ、本家の当主妻の兄弟の養子にさせた上で、面倒を見させる。つまりは分家は血の繋がりは関係なく、毎度養子を2人以上とる形となる。
しかし、その伝統は隆司さんの父によって崩された。隆司さんは伝統により確かに分家の次期当主を異性で選んだ。
それなのに許嫁は別の組との娘。これは隆司さんの父が決めたこと。
水無月家を繁栄させるためにしたことだ。でも、隆司さんは反対した。それほどに自ら選んだ分家の娘に恋い焦がれたから。
本家の子供はみんな執着心が強い。だから一度決めた分家の異性とは繋がりが深まるせいか必ず気持ちをもってしての結婚となる。
分家はそれぞれだが、養子として本家には逆らえないため渋々ということもあるらしい。
とにかく本家である隆司さんは許嫁に目も暮れず、ただただ分家の娘と距離を縮め、最終的には結婚を通り越して子供2人を授かった。
これでは許嫁とその親も怒り狂うわけで、他の組との安泰を考えていた隆司さんの父も焦る。だから賭けに出た。
隆司さんに、隆司さんの父は一度限りの脅しと約束をした。
“許嫁を一度抱いてやれ、あれでもお前を愛してはいるんだ。一度でいい。その日にお前の愛したものも抱け。もし、許嫁を抱かないなら、既に分家の当主だとしても殺す。代わりはいるからな。だが、やってくれるならお前たちの結婚を許してもいい”
隆司さんはきっと凄く考えただろうけど、逆らえなかった。愛した者の命にも関わる脅しだからだ。
そして隆司さんは自分の父の指定した日付に約束通り2人の女を抱いた。これで終わり、隆司さんはそう思う。
だが、その時の行為で3人目を授かった時に隆司さんの父へ運命が傾いた。一か八かの賭けだったものが大きなものとなって傾いた。
3人目と同時に隆司さんにとっては4人目とも言える存在ができつつあったのだから。
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