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「全財産って…そんなに価値のある子供には見えませんが…」
「………俺はこいつに救われたんだ。だから、次はこいつを助けたい。」
僕が救った?何を言っているんだろう、この人は。
「1憶です」
「1憶か、小切手でいいか?」
「えぇ」
さっと何かを書いて店主さんに渡す。慣れた手つきで。でも1憶って……父はそんなに借金を……。
「じゃあ、こいつはもらう。ほら着ろ」
「あ……」
裸の僕に躊躇なく自らの上着を僕に着させる。僕より大きなその人の上着はぶかぶかで、太股が多少隠れる。
「お買い上げありがとうございます!君、主人にしっかり尽くすんだよ?逆になりそうだけど。あ、佐々木様、他の子をお召し上がりしますか?」
「今日はいい……です」
「そうですか?」
そんな会話を聞きながら僕は僕を買ってくれた人……あ、店主が主人って言ってたし、ご主人様と呼ぶべきだよね。
とにかく、ご主人様とその場を去った。
「おやおや、鵺燈くんようやく戻ってきたか」
見定めの部屋から出れば外に出る出入口付近で着物を着たおじさんがご主人様に話し掛ける。
鵺「お騒がせして申し訳ございません」
「いいんだよ。それでその子は買ったのかい?」
鵺「はい、1憶で取引しました」
「やはり高値だね。躊躇はしなかったのかい?」
鵺「俺にとっては命より大切なものですから」
「命より…か。でもようやく見つけられたね」
鵺「はい、旦那ありがとうございました。旦那のおかげです」
「お礼はいい。私が勝手にしたことだよ。鵺燈くんは私の予想以上に頑張っているしね。無理に養子にしたかいがあったものだ。君の努力のおかげで非難されることもない。全て君の努力の結果だよ。」
鵺「しかし、旦那に見つけられ、拾われなければ、俺は飢えて死んでいました。それに、旦那に手伝っていただいたからこそ弟が手に入ったんです。全ては旦那のおかげです」
弟?手に入ったってまさか僕が?この人の?
「それは私の気まぐれだ。それに、その子に関しては、すぐに手出しできなかった私に感謝することじゃないよ、結局売買時期を見逃して探すのに時間がかかったしね」
この人たちは僕を探してた?それにご主人様は僕を最初から買う気だったの?でも、僕はこの人の弟なんかじゃ……いや、でも、兄弟がいたかなんてわからないし…。
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