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よくわからないままに外に出ればさすがに上着となる一枚の服では寒い夜。今は寒いから夏はないにしても、秋なのか冬なのか春なのか、ここは外でも全く季節感がわからない。
日付でさえ、いつ見たかわからないけど、確か学校最後の日に3月と見たから、春なのだろう。
何日かまではわからないけど、1日2食だった店の生活では、その2食を食べて1日と考えた。
そんなことを考えていたら、早くも車の中に乗せられていた。車というものは知っていたけど、実際乗るのは初めてだと……思う。
奴隷として迎えに来られた時目隠しされてた間に乗っていたかもしれないから。
狭い空間なのに、ついキョロキョロとしてしまう。そしていきなり動き出した時にはビクッと驚いてしまった。ご主人様はその様子を見ていたのかクックッといった感じに笑っている。
何が面白いのかよくわからず、首を傾げれば、腰を抱かれて引き寄せられたため、慌てて自ら寄り添う。奴隷なのにわざわざ引き寄せてもらうなんて、ご主人様に苦労はかけられないからだ。
寄り添うことで、ご主人様は機嫌をよくしたように僕の頭を撫でた。優しい撫で方にほんわかとした気持ちになる。
そういえば僕、頭を撫でられるなんて初めてじゃないかな、なんてことを思う。この人なら、例え奴隷でも至福を得られる気がする。
奴隷が主人を選ぶなんてダメなんだろうけど……。いや、寧ろ人間として扱われない奴隷が、至福を感じてはいけないのではないだろうか。
鵺「どうかしたか?」
「いえ…、ご主人様は奴隷にお優しいんだなと……。僕は奴隷なのに幸せに思っちゃって……。奴隷は幸せなんか捨てなきゃですよね」
鵺「話を……聞いてなかったのか?」
「え?」
鵺「金で買ったとはいえ、それはあのバカ親父の借金を払ったに過ぎない。今じゃ親父でもねぇ他人けどな。俺はあいつからお前を引き取っただけだ。お前は奴隷じゃなく俺の弟、幸せになる資格はあるんだよ」
「でも僕は、ご主人様が兄だった記憶がありません。もしかしたら、僕じゃないかもしれないじゃないですか…。」
鵺「俺をなめてんのか?お前を間違うはずねぇ…」
「でも……」
鵺「ち…っ」
「…っ……す、すみ、すみません…」
ど、どうしよう…。奴隷の分際でご主人様の機嫌を損ねるなんて……っ
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