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…………が。
「思い出せない……」
昨日のことではない。
自分のことが、だ。
名前も、住んでいた場所も、年齢も、生きている証の全てを俺はなくしていた。
『記憶喪失』
恋愛系ドラマやアニメならよくある設定だが、自分がなるなんて思ってもみなかった。
それじゃ俺はなぜ来たか分からないまま、詳細が一切不明のゲームに参加しなきゃならないのか!?
急に恐怖で吐き気さえしてきた。
「教えてくれ!これは一体どんなゲームなんだ!」
せめて情報を得ないと。
「では、ゲームの説明を始めます」
そこから単調にゲームの説明がなされる。
「このゲームはミッションをクリアして強くなり、エリアを解放し、最終のボスを撃破した瞬間にクリアとなるゲームです」
ふつうのオンラインでやるようなRPGだな。
「このゲームはポイント制を使用しております。それは生命の、金銭の、寿命の値です」
「もう少し詳しく教えてくれ」
何を言ってるか分からない。
「右腕の液晶画面をご覧ください」
そう言われて俺は右腕を見る。
大きな液晶画面の付いたリストバンドがはめられていた。
そこには「10,080P」と映されている。
「その値が初期のポイントです。それは所持金であると同時に、一般のRPGでいうHP(ヒットポイント)となります。そして現在、1分=1Pずつ減っていく、あなたの寿命です」
一旦間を置いて、彼は恐ろしい事実を告げた。
「そのポイントが0になったとき、あなたの大脳に特殊な電磁波を与え、あなたの意志および感情を切除します」
「……それじゃ……俺は……死ぬって……ことか……?」
あまりのことに俺は頭がついていかない。
「死ぬわけではありません。ただあなたの存在を消去するだけです」
ウソをついてはいない。彼はシステム。ただの機械。
だからこそ、その言葉は暴力的なまでに俺の脳を貫いた。
「その代わり、ゲームをクリアされた方には、1P=1$で換算し、クリア報酬として現金か銀行振り込みでお渡しいたします」
そうか、だからみんなこのゲームに参加するのか。
「なお、テスト版では、クリアされたプレイヤーのポイントは28,165,200Pでした」
二千八百万ポイント……じゃあ日本円にして……1$=90円で、二十五億円!!!?
「賭けるものは己の人生。得られるものは第二の人生。人生ゲームに、ようこそ」
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