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悲鳴が一つあがった。
それは連鎖し、先ほどまでの奇妙な静寂は阿鼻叫喚の渦に変わる。
その声で俺の足は自分の支配下に戻った。
全力で森を目指して走る。
さっきのような余裕なんて無い。少しでもあいつらから離れなければ。
捕まった瞬間、死が待ち受けているのだから。
幸いにも、森に着くのは早かった。
しかしゲームはそれで終わってはいない。
「白い鍵……どこだ……!」
高い樹木が立ち並び、地面も砂から足跡が付くような土に変わっていた。
時々あがる悲鳴。それはきっと、断末魔の叫びだろう。
木々を縫うように右へ、左へ。
地面に目を凝らし、コード・エスケープを探す。
俺の周りには数人のプレイヤー。奴らの姿はまだ見えない。
すぐ近くで悲鳴があがった。
血に飢えた獣が、次に狙いを定めるのは……俺たちだ。
悲鳴の方向――右に首を向けると、一体。さらに真後ろに一体。
今のところ距離があるが、向こうの方が速度がある。
「ユーズ!」
俺の隣のやつがそう唱えた。
カードが変化し、シンプルな形状の槍が出てくる。
そうか、武器か――。
俺を含む全員がユーズと唱え、武器を具現化する。
通常、RPGというゲームは敵を倒して強くなるのが王道だ。
――本当に?
もし本当にそうなら、あいつは「戦闘区域から脱出せよ」と言う必要があるのか?
俺の脳が1つの可能性を示す。
そういうゲームでは時々ある、最悪の設定が……。
「これさえありゃ……!」
一人の図体の大きなプレイヤーが、その体に見合った豪胆さを発揮して獣へ向かう。
「やめろーーー!!!」
俺の制止も叶わず、そいつは脳天めがけて斧を降り下ろした。
クリーンヒット。
しかし効果音は「カーン!」という高音。
出た文字は……。
『NO DAMAGE』
しかし獣の反撃は、首の骨が折れる嫌な音とともに、鮮血を撒き散らして。
彼を『DELETE』に追い込んだ。
もはや間違いない。
今、この状況では敵は倒せない設定なのだ。
まさに猛獣の檻。
……俺たちがエサだ。
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