第1章

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「次は立勝大だぞ?」 試合ビデオを見ている良太に須田が聞く。 良太は次の立勝大のビデオを見終わり、決勝で当たるだろう明学のビデオを見ている。 「立勝大はどうにかなるだろ、3-0くらいでさ。」 「ああ。」 そう言って須田は隣の椅子に座る。 その後無言で明学のエースの球を見る。 「お前さ、」 須田はビデオを見たまま良太に聞いた。 「横浜シニアのエースだよな?」 良太は驚いたように須田を見る。 「肘、壊したんだろ。なんで捕手なんか選んだんだよ。」 須田はビデオを見たままだった。 「はぁー、やっぱり知ってたか。」 良太は大きくため息をつく。 良太は肘を壊した元投手だった。 メスを入れれば治るものだった。 しかし、良太はそれをしなかった。いや、できなかった。 「手術をしてから1年間はリハビリをするんだ。」 医者にこういわれた良太はメスを入れることを断った。 高校の1年間を無駄にできなかったからだ。 投手はできない良太は、元投手経験から捕手を選んだ。 投手の気持ちがよくわかり、全力送球はおもに盗塁の時だけ。 隠しておくつもりだったが、シニア出身の須田は知っていた。 「俺は今は誰にも言うつもりはないけどな、」 須田はビデオから目を離し良太を見る。 「試合中、異変が起きたり、投手をやるようなことがあったら絶対言うからな。」 (やっべーな) 良太は焦った。なぜなら、いざとなったら自分が投手になってもいいと思っていたからだ。 「いいな!」 須田はそう言い残し、部室をあとにした。
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