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「次は立勝大だぞ?」
試合ビデオを見ている良太に須田が聞く。
良太は次の立勝大のビデオを見終わり、決勝で当たるだろう明学のビデオを見ている。
「立勝大はどうにかなるだろ、3-0くらいでさ。」
「ああ。」
そう言って須田は隣の椅子に座る。
その後無言で明学のエースの球を見る。
「お前さ、」
須田はビデオを見たまま良太に聞いた。
「横浜シニアのエースだよな?」
良太は驚いたように須田を見る。
「肘、壊したんだろ。なんで捕手なんか選んだんだよ。」
須田はビデオを見たままだった。
「はぁー、やっぱり知ってたか。」
良太は大きくため息をつく。
良太は肘を壊した元投手だった。
メスを入れれば治るものだった。
しかし、良太はそれをしなかった。いや、できなかった。
「手術をしてから1年間はリハビリをするんだ。」
医者にこういわれた良太はメスを入れることを断った。
高校の1年間を無駄にできなかったからだ。
投手はできない良太は、元投手経験から捕手を選んだ。
投手の気持ちがよくわかり、全力送球はおもに盗塁の時だけ。
隠しておくつもりだったが、シニア出身の須田は知っていた。
「俺は今は誰にも言うつもりはないけどな、」
須田はビデオから目を離し良太を見る。
「試合中、異変が起きたり、投手をやるようなことがあったら絶対言うからな。」
(やっべーな)
良太は焦った。なぜなら、いざとなったら自分が投手になってもいいと思っていたからだ。
「いいな!」
須田はそう言い残し、部室をあとにした。
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