序章・約束と誓い

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たくさんの人がざわめいている。みんなは友達を探し、卒業アルバムの裏表紙などにメッセージとかを書いてもらっている。おれは特にやることもなく、窓側の席に座り、まだ咲いてない桜の木をボーッと見ていた。 「トモヤ。ちょっと時間ある?」 ふと後頭部の方から声が聞こえた。マサキだ。青山将生(アオヤママサキ)、野球部のキャプテンだった。おれとバッテリーを組んでいた。 「全然あるけど……何?」 おれはマサキの顔をジッと見ながら言った。マサキはこれからも野球を続けるぞっと言わんばかりの坊主の頭を見て、おれが高校で野球をやらない現実を独りで痛感していた。 おれは中学野球の県大会の決勝を終えると、肘に違和感を感じて病院へ行くと、肘の故障だった。約2年間の投球禁止。医者にそう突きつけられたのだ。関東大会も決まっていたのに、おれは故障のせいで試合には出れない。2年という月日のせいで、おれは高校でも野球を諦めることになったのだ。 詳しく思い出すと、何とも言えない悔しさと未来の輝きが薄れていく感じがして、おれはどうすれば良いんだろうと、路頭に迷った気持ちになるのだ。 マサキを見ていると、未来の輝きの差を感じとってしまうのだ。 「キャッチボールしようぜ。軽い投球なら一応ダイジヨーブでしょ?」 マサキはニコッと笑みを浮かべながら聞いてきた。おれは一呼吸を置いてから二度、三度と頷いた。マサキの笑みは更にニコッとなった。 おれとマサキは卒業式とか、そんな空気なんか関係なく、行き交う人達とは違う空気感でおれとマサキは部室に向かって歩いていた。
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