0章-戦乱の宵

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「ハウンド4がショートしました! 至急救出に向かってください!!」 スティールスーツを穿とうとするかのように、激しい雨が降り続いていた。 周りの音が聞こえなくなるほど、雨の弾かれる甲高い音が鳴り響いているのに、オペレーターの叫ぶ声は痛いほどはっきりと聞こえた。 「どこだ!!ポイントを教えろ!!」 突如ARディスプレイに赤色のマーカーが現れ、スーツ内に声が反響する。 マーカーを確認すれば誰の声なのかが分かるが、聞かずとも分かった。 聞き慣れた声だ。 優しくてカッコ良くて、やかましいくらいに大きな声。 「ポイント12,65です!カミヤさん気をつけて進んで下さい!」 「ああ、分かってる!」 私は助けられてばかりだ・・・。 工場の固いコンクリートの上で、倒れた身体を必死に動かそうとするが、ぴくりとも動かない。 エネミーの攻撃からハウンドを守るスティールスーツは、実に強固だが、その硬さ故にエネルギーの補給が途絶えると途端に機動力が落ちる。 ショート状態となった私のスーツは、今や足枷でしかない。 「ごめんなさい、カミヤさん・・・。」 何とか口だけを動かし、それだけを伝える。 いつものミッションなら、つらつらと自責の念を伝えるのだが、今回のミッションは状況が酷すぎる。 笑って許せる状況ではない。 九死に一生、命からがら逃げてきたのだ。 「気にするな、困った時はお互い様だ!」 再び赤いアイコンが現れ、声が聞こえた。 だが今度はスーツ内だけではなく、後ろからもその声が聞こえてきた。 案外近くにいたようだ。 スーツの背中に何かを当てられる感触で、ショートの修繕が行われたことが分かった。 途端にスーツにエネルギーが回り、身体の自由が効くようになった。 起き上がる直後に緑色の発光が視界の端に見えたかと思うと、ARディスプレイに回復成功の文字が浮かび上がった。
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