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すぐに振り返り、ショート救出と回復を行なってくれた人物に礼を言おうとするが、右手を上げ私の言葉を制した。
まるでスーツの中の私が見えているかのようだ。
「いいんだ、それよりヘリまではあとどのくらいだ?」
「あと・・・500mほど先。あの建物の向こう側です。」
緊迫した声に私の声も自然と震えてしまう。
「よし、急ぐぞ!」
「はいっ!」
スーツの背中と足についているブースターを使用して、地を翔ける。
いつもならこのブーストダッシュする時の加速感で高揚するのだが、まさかこのブーストにもどかしさを感じる日が来るとは思ってもみなかった。
急がなきゃ・・・。
奴が来る・・・。
焦る気持ちを抑えながら先行するスーツを追う。
ARディスプレイに表示されている私のアサルトライフルの残弾数は半分を切っている。
火力は雀の涙ほどしかない。
ここで奴が来たら・・・終わる。
「状況報告を願います。」
不意に聞こえてきた声に思わずアサルトライフルを構えるが、この声も聞き慣れた声だった。
中途半端に組み上げられた鉄骨からブーストジャンプを使って飛び降りるようにして、現れた声の主は華麗に地面に着地した。
「ああ、エレナか!こっちは無事だ。」
「分かりました。ヘリでハウンド3が待機しています。急いでください。」
交互に表示される赤と青のアイコン。
残る一人がヘリにいるということは、これでハウンド全員が揃ったということになる。
どうやらぎりぎり間に合ったみたい・・・。
ほっと胸を撫で下ろしつつ、今度は二つのスーツについていく。
私はこの二人の後ろをついていってるばっかりだ。
次のミッションではもっと、ちゃんとしなきゃ・・・。
「建物脇のフェンスを破壊して下さい。そこを通ればすぐにヘリまで向かえます。」
オペレーターのアイコンが表示され、指示が出る。
フェンス・・・あれか。
確かに二つの建物を繋ぐようにフェンスがあった。
「分かった!」
「 指示、確認しました。」
二人にも伝わったようで、相変わらずの速攻でフェンスに穴を開けた。
二人は風のようにフェンスを通過し、先を行く。
私も必死にそれに続き、ようやく建物の裏側へとたどり着いた。
「あれか!もう少しだ、行くぞ!」
工場の駐車場にS.I.V.A専用のヘリが停まっているのが見えた。
ヘリのドアを開け、こちらに向かって手を振っているのも確認できる。
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