1章-新米ハウンド

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地球は今、類に見ない危機に襲われている。 世界のあちこちで大規模な戦争が起こっているのだ。 私が生まれる前の時代こそ、各国間で戦争が行われていたというが、現在起きている戦争というのは国どうしの戦争ではない。 更に言えば、人どうしの戦争でもない。 ー鋼鉄虫 その存在が世に知られるようになったのは、つい最近のことだ。 2年前。 私がまだ10歳の頃。 最初はアフリカだったか、ロシアだったか。 突如謎の生命体が発見されたのだ。 ううん、発見されただなんてそんま甘い話しじゃない。 そいつは群れをなして街を襲ったのだ。 テレビで初めてそれを知った時は、映画か何かのお話しかと思った。 だってそいつの姿はあまりにも巨大で恐ろしく、とてもじゃないけど現実のものとは思えなかったのだ。 そいつらはどんどん数を増やし、次々と街を破壊していった。怪我人はもちろんのこと、死者も少なくはなかった。 全人類が危機を感じる頃、誰が言い出したのかそいつには「鋼鉄虫」という名前が付けられた。 理由は簡単だ。 鋼鉄虫は様々な種類がいるが、どの個体にも共通していることは、鋼鉄のような硬い外骨格を持っていることと、虫を巨大化させたような形をしていることだ。 それ故に世界ではそいつらのことを称して鋼鉄虫と呼ぶのが一般的になり、どの国でも鋼鉄虫の殲滅が最優先の事項となった。 一番先に行動を起こしたのは、アメリカかどこかの元傭兵を寄せ集めた組織だったと思う。 彼らは持ち前の武器を持って鋼鉄虫に立ち向かった。 この時私は心底安心していた。 今まで戦争をしてきた人達が集まったのだから、鋼鉄虫なんかに負けるはずかない、と。 結果は簡単に裏切られた。 死者多数。 しかも彼らの武器では鋼鉄虫にまったく歯がたたなかったという。 当時の武器では、鋼鉄虫の硬い防御を貫くことは出来ず、傷つけることすら難しかったらしい。 世界は不安に覆われた。 人類は鋼鉄虫という謎の生命体に滅ぼされてしまう。 誰しもそう思ったに違いない。 だけど諦めなかった人も中にはいた。 死んだ鋼鉄虫の中身を調べ、ある成分がエネルギーとして使えることを発見した研究者だ。
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