1.兄

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「もう、行っていい?」                                             「ちょっと待って」                                              俺は涼介の鞄を取り、中身を確認した。                                        「これは、俺が預かるからな」                                         俺が出したのはカッター                         なんでかって?涼介が俺のいないうちに切ってしまわないように。                                      「やだよ!俺のものなのに...!」                                     涼介は俺からカッターを奪おうとして必死に跳んでいる。                                    「分かってくれよ!...何回も...毎日言ってるじゃん..聞いてくれよ。な?」                                     こんな行為も毎日言い聞かせる度に、やっている。                                            記憶がまるで飛んだように...昨日言ったのにも関わらず分かってくれないんだ。                                  「...分かった..」                          「学校終わったら返すから。ごめんね?」                            「いいよ...」                               「行こうか...授業始まっちゃうし」                                       涼介の手を取り、教室へ向かった。                                                    ―カッターは体の一部。それを取ったら、壊れてしまうことくらい、俺は知っているよ。
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