11人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
まぁ、そんなことは関係ない、今は飯の時間だ、とトーストに目玉焼きを乗せようと皿を手にした時だった。
「隣、いいかな?」
先程入ってきた二人組のうち、少年の方がそう問うてくる。
視線で周囲を窺うと、席はちらほら埋まってきた程度であり空席は多い。
が、わざわざ無下にする必要もない。
「どうぞ」
トーストに目玉焼きを載せながら答えると、俺の隣に少年が、その隣に少女が腰かける。
「君、日本人だろ?」
席につくと、こちらの顔を覗き込むようにして彼が尋ねる。
「あぁ、立花秀久。東北の片田舎のしがない家の出だ」
俺がそう答えると、彼は人懐っこい笑みを浮かべてこちらに手を差し出した。
「俺は葛木清隆。よろしく」
その手をしっかりと握り握手を交わす。 葛木。
その名前が頭の中で妙に引っ掛かった。
「私は妹の姫乃です。立花さん、よろしくお願いしますね」
と、少女……葛木さんが少しこちらに身を乗り出しながら笑いかける。
その顔を見た瞬間、思い出した。
日本における魔法の名家、葛木一族だ。
「葛木……そうか。あの葛木か……」
目玉焼きに塩と胡椒を振り掛けながら呟く。
本来目玉焼きには醤油だが、パンとは合わない。
不可だ、不可なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!