九月一日

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 まぁ、そんなことは関係ない、今は飯の時間だ、とトーストに目玉焼きを乗せようと皿を手にした時だった。 「隣、いいかな?」  先程入ってきた二人組のうち、少年の方がそう問うてくる。  視線で周囲を窺うと、席はちらほら埋まってきた程度であり空席は多い。  が、わざわざ無下にする必要もない。 「どうぞ」  トーストに目玉焼きを載せながら答えると、俺の隣に少年が、その隣に少女が腰かける。 「君、日本人だろ?」  席につくと、こちらの顔を覗き込むようにして彼が尋ねる。 「あぁ、立花秀久。東北の片田舎のしがない家の出だ」  俺がそう答えると、彼は人懐っこい笑みを浮かべてこちらに手を差し出した。 「俺は葛木清隆。よろしく」  その手をしっかりと握り握手を交わす。 葛木。  その名前が頭の中で妙に引っ掛かった。 「私は妹の姫乃です。立花さん、よろしくお願いしますね」  と、少女……葛木さんが少しこちらに身を乗り出しながら笑いかける。  その顔を見た瞬間、思い出した。  日本における魔法の名家、葛木一族だ。 「葛木……そうか。あの葛木か……」  目玉焼きに塩と胡椒を振り掛けながら呟く。  本来目玉焼きには醤油だが、パンとは合わない。  不可だ、不可なのだ。
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