承前

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 夢を、見ていた。  何か、大切な夢を。  目が冴えてくるに従ってぼんやりと消えていく夢の尻尾を、懸命に手繰り寄せる。  目覚める瞬間まで確かに覚えていたはずの夢を、必死に思い出す。  何か、大切な約束を忘れてしまったような焦燥。  忘れたことだけを思い出してしまったような不安感。  それらに突き動かされて、訳が解らないまま頭を働かせる。  まるで雲のように掴んだ指からすり抜けていく夢。  その夢を追いかける自分。  普段なら滑稽なことと一笑に付してしまうような、些細なことに必死になる自分。  らしくない。全くもってらしくない。  ふっ、と息をつく。  夢の内容を思い出すために必死になる自分に、軽く苦笑い。  必死になって思い出せたのは、ひとつの言葉と、顔の見えない少女の姿。 『桜の咲く園で、また出逢おう』  窓の外には、満開の桜。  少女が着ていたのは、ここ風見鶏の女子制服。  ふと、入学当時の記憶を思い出す。  過去に起因する夢だとしたら、なにかヒントでもあるだろうかと、僅かな期待を込めて。
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