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~ラグゼム視点~
「行ったか。」
俺は水晶を覗き込みながら呟いた。
あいつは、大丈夫だろうか。
そういえば、名前を聞いていなかったな。
「あの子は山下泰介というらしいわ。」
後ろから聞こえた声。
俺は振り返らず水晶を見続けた。
「おい、何故ここにいる。呼んではいないぞ。」
「ふふ、あなたが素直に話しているのを聞いてたから、教えてあげたのに。
…まぁ、それはどうでもいいわね。
勇者がもう少しで召喚されるわ。
私は何をしたらいい?」
「お前の勝手にしてくれ。
…ただし、泰介には手を出すな。」
「あら、彼が気に入ったの?
あの短時間で仲良くなるなんてね。」
後ろから笑い声が聞こえたが無視した。
泰介は面白い奴だ。
なるべくあいつに協力しようと思う。
…こいつを通して
俺は後ろを向き、笑っている奴を見た。
「…大丈夫よ。彼に手を出すわけないわ。
では、城に戻るわね。
・・・
魔王様。」
聞こえた声は途切れた。
城に戻ったのだろう。
…出来れば、泰介とは戦いたくはない。
だから、それまでに誤解を解けたら…。
そう思い、俺は席を立ち奥の部屋に向かった。
~ラグゼム視点終了~
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