3470人が本棚に入れています
本棚に追加
「……綺麗だなぁ」
飛行機の音に誘われて頭上を見上げてみた。視界いっぱいに広がる大きな青空を。そこには大小がまばらな雲が多数存在。手を伸ばせば掴めそうな気配さえしていた。
「ん…」
彼女もこの景色を見ているのだろうか。自分の知らない遠い遠いどこかの街で。
「出てくれるかな…」
画面の暗くなっていた端末を見つめる。久しぶりに連絡してみようかと考えていた。
「……いやいや」
けど忙しくて出れないかもしれない。出てくれないかもしれない。最悪、着拒されてる可能性だってある。別れ際に突き放すような真似をしてしまったから。
仮に繋がらなくても電話をかけた事が向こうの履歴に残ったらマズい。恥を上塗りするのは勘弁だった。
「あ~あ…」
勝手に想定した状況と一方的に葛藤する。女々しい性格は未だに健在。
バイトを始めた事により自信がついたと思っていた。だが彼女の事を考えると途端に以前のへたれな性格に逆戻り。
理想と現実は大違い。世の中は上手くいかない事だらけだった。
最初のコメントを投稿しよう!