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「ん…」
行動するべきか迷う。助けた方が良いと理解しているのにその勇気が湧いてこない。それに最近は子供に声をかけただけで不審者扱いされる事案も発生していた。休み時間に経験したような恥ずかしい思いをしたくなかった。
「大丈夫?」
「……あ」
「どこか怪我してない?」
見捨てようと考えていると席に座っていた1人の女性が立ち上がる。床に這いつくばっていた男の子に声をかけながら。
「お友達はいないの?」
「ん…」
「1人?」
「……ぐすっ」
「とりあえず荷物拾おう。このままじゃ誰かに踏まれちゃうかもしれないよ」
パッと見、自分と同世代ぐらいの女の子。ただし着ているのは制服ではなく私服だった。
「ふ~ん。この筆箱、変形するんだ」
「うん…」
「ロボットみたいだね。格好いいじゃん」
彼女は男の子を抱き起こすと隣に並ばせる。母親のように慣れた手付きで。
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