2.渇きと潤い

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「ぐえっ!?」  背中に言いようのない痛みが走る。そしてトイレ横の壁に激突するまで地獄は続いた。 「……いったぁ」  床に手を突きフラフラと立ち上がる。軽く足首を捻りはしたが幸いな事に怪我は無し。  強打した腰を手で押さえながらもどうにかしてリビングへとやって来た。家族が集う場へと。  そこにいたのは世間一般的に両親と呼ばれる生き物。椅子に座ってケータイを弄っている父親と、キッチンにいる母親に挨拶をした。 「お、おはよう」 「おう。凄い音したけど大丈夫か?」 「うちの階段、急すぎない? いつも滑り落ちちゃうんだけど」 「確かにな。やはり危険だからハシゴの方が良かったかもしれない」 「言ってる意味理解してる?」  父親の向かいの席に座る。日常会話を交わしながら。 「仕事って忙しい?」 「あぁ。サボりたいぐらいだ」 「分かる分かる。学校や会社に通わなくて済む人生があったら楽そうだよね」
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