2.渇きと潤い

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「おらおらっ、サッサと出てこんかい! 中に隠れてるのは分かってんだぞ!」  そして部屋の前までやって来るとドアをノック。ドラマに出てくるヤクザを意識して呼びかけた。 「あ、違う。ここ自分の部屋だ」  しかしすぐに勘違いに気付く。隣に移動して再度ドアをノックした。 「おらおらっ、サッサと出てこんかい! 中に隠れてるのは分かってんだぞ!」  同じ作業を繰り返すのは辛い。眠気もあってか思考回路が停滞気味だった。 「やっぱり…」  数秒待ってみるが物音一つしない。ドアノブを捻ると恐る恐る扉を開けて中へ。そこには首の筋肉だけを支えに壁に逆立ちしている女の子の姿があった。 「グガガガカッ!」 「……どうしたらこうなるんだ」  寝相の悪さを露呈してしまっている。ヨダレとイビキを暴走させながらの睡眠だった。 「ほら、起きて。朝だよ」 「う、う~ん…」 「どんな体勢で寝てるのさ」  すぐに彼女に近付いて体を揺さぶってみた。遠慮なく強引に。
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