1.光と影

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「……重っ!」  図書室へとやってくると10冊近くの辞書を手に取る。1冊につき約5センチ程の厚み。積んで持ち上げたのだが結構な重量になってしまった。 「これを1人で持つとか無理だよ…」  実行する前から予想していた展開を迎える。勉強道具がただの重りへと変貌する事態が。 「はぁ…」  白旗を掲げたいが今さら音を上げる訳にもいかない。サボってしまった代償による教師からの叱責が怖いので。かといって周りには助けを求められそうな知り合いは不在。友人の少ない人間には絶望的な状況だった。 「ほっ!」  観念して単独でのミッション遂行を試みる事に。全神経を手元に集中させるとゆっくりと歩き出した。 「くっ、くく…」  覚悟は決めたものの辛いものは辛い。脆弱な体に過度の負荷がかかる。  更に周りからの好奇な眼差しにも耐えなくてはならなかった。目立ってラッキーなんて思えるタイプではない。心の中に溢れているのは爆発してしまいそうな羞恥心だけ。
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