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「聞いてよ。男子とぶつかっちゃってさぁ」
「あらら、マジか」
「しかも足に辞書が落ちてきて。もう痛いったらありゃしない」
「災難だったね~。てか加代子の日頃の行いが悪いんじゃないの?」
「なんでだよ!」
床に座り込んでいた女子生徒が立ち上がる。堂々と愚痴をこぼしながら。
「行こ。次の授業に遅れちゃうよ」
「だね。熊野の奴、テメェが頻繁に遅れてくるクセに生徒が遅刻すると理不尽にキレまくるからな」
「……あ」
そしてそのまま友人と並んで歩き始めた。今の出来事を全く意に介さずに。
追いかけて再び謝ろうか迷う。しかし躊躇っている間に彼女達は廊下の奥へと姿を消してしまった。
「はぁ…」
自然と溜め息が漏れる。ぶつかった原因は自分の不注意だから仕方ない。
ただそれでも無愛想な態度だけはとってほしくなかった。欲を出せば優しい声をかけてほしかった。
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