25.春と空

13/21
前へ
/801ページ
次へ
 友人が元気良く挨拶して立ち去る。その背中を小さく手を振りながら見送った。 「……行っちゃった」  しばらくその場で立ち尽くす。閑散とした住宅街で。  外には出てきたがする事がない。この辺りには遊び場もないし、かつての友人達とはほとんど連絡を取り合っていないから。  休みというのは自由で退屈だ。最近、そう感じる機会が増えていた。 「はぁ…」  足の向きを変えて歩き始める。来た道とは違うルートを。  春休みなので人が多い。自動車の交通量も普段より増えている気がした。 「……楽しそうだなぁ」  途中、住宅街で小さな公園を発見する。小学生が数人で遊びまわっている姿を。その光景を昔の自分と重ねながら観察した。 「ん…」  もう二度とあの時代に戻る事は出来ない。再現する事もやり直す事も。そう考えるとまるでこの世界に1人だけ取り残されたような錯覚に襲われた。 「はぁ~あ…」  しばらく見ない間に街の様子は変わっていく。住んでいる人も風景も。
/801ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3470人が本棚に入れています
本棚に追加