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「……やだなぁ」
床に膝を突いて落下物を回収する。四方八方に散乱してしまっている辞書を。
「何あれ~」
「1人神経衰弱でもしてるんじゃないの?」
「やだ、もう」
「くっ…」
屈んでいると頭上から声が聞こえてきた。辺りを行き交う生徒達の笑い声が。
奇異の目に晒されながらも作業を進める。誰もかれもが見ているだけで助けてなんかくれやしない。
「くそっ…」
まさか教師からの頼まれ事が原因でこんな恥をかく羽目になるなんて。拾い終わるとその場から逃げ出すように教室へと運んだ。
「……あ~あ」
神様を恨みたい。こんな人生を歩ませてきた事に。こんなへたれな性格で下界に送り出してきた無責任具合に。
悪いのは全て自分だと分かっている。それでも何かのせいにしてしまう方向に思考が動いていた。
もし1つだけ願いが叶うなら。もし時間を巻き戻す事が出来るのなら。口にするのは生まれたその瞬間からやり直させてくれという事。
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