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加奈子は自販機の前にいた。これから、自販機にお金を入れて、飲み物を買うつもりでいた。喉が渇いているという訳ではない。加奈子は人知れず、ある薬を飲みたかったから。
それは、一時間ほど前、医者に処方してもらった薬だ。
「うむ。最近、夫婦の間柄が上手くいっていない」
医者は精神科を専門としている者であった。医者の元を訪れた加奈子は、最近、自分と旦那との交流を説明していた。
「はい。なんと、いいますか、お互いに相手のことが無関心といいますか。以前のような愛情が沸かないのです」
「それは、いけませんね。ケンカをするなら、まだしも、相手に対して無関心でいるとは・・・。これは、典型的な熟年離婚の例です」
「熟年離婚ですって?」
「はい。最近、ニュースでも話題になっているでしょう。ある年代になると、急に離婚をしだす夫婦が増加の一途を辿っている。あなたは、まさに、その熟年離婚の予備軍です」
医者は重い口調で加奈子に告げる。ハッキリと、熟年離婚を告げられると、加奈子は堪えた。
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