四面皆楚歌する

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 呆気ない最期を迎えた大将の首が馬に蹴飛ばされ転がっていった。  その仕打ちに怒り報復を誓った軍勢が寄せてくる。幾度も、幾度も退けついに陣を抜けた。  待ち受ける兵の固まりを切り伏せ、隣の丘まで駆けると振り返らずに問う。 「何騎じゃ!」  問うまでもなく変わらぬ数を報告されると信じきった声。  戦場に在って唯の一度も項羽を落胆させたことがない同朋。 「二十八騎に御座います!」  矢が刺さり、出血夥しい者も居るが歯を食いしばり騎乗したまま戟を握っている。  武将は己に残された時間が短いと悟っていた。それでも最後の一時まで僅かでも大王の傍で勇姿を見ると誓う。 「うむ、次はあやつじゃ!」  愛馬を少しだけ休ませると、すぐにまた敵を見定めて突撃を行う。  項羽一人だけでも数百人、二十八人で数千人を打ち倒し、未だに漢兵を苦しめている。  万は居るだろう軍に突入すると今までに増して武を奮った。  これほどまでに敵が居ると言うのに、すいすいと道なき道を進んで大将の眼前に躍り出る。
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