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たったの二十八騎が万の兵を退けたかどうかの真偽を疑った者が居た。
だがそれはその場に居た兵らの証言で間違いないことが裏付けられている。
戦に勝った漢軍に従っていた楚人も、楚王が壮絶な最期を遂げたと聞くと喜ぶ気にはなれなかった。
勝敗が決したその日、悲しげな調べで楚歌が一晩中歌い続けられる。それを止めさせようとする者は誰も居なかった。
経緯を知った漢王は、楚王を辱めることなく丁重に葬った。死んでしまえはどんな強敵であっても、良い部分が見えてくる。
墓標には楚王と虞美人、周囲に虞兄を含め二十九の亡骸が埋葬された。
墓前に咲く花を虞美人草と呼ぶようになり、現代へと語り継がれている。
遠い昔、項羽は確かに存在していた。私たちと同じ空を見て、彼は何を思っていただろうか。
完結
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