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漢を本貫に持つ王、劉邦率いる大軍が楚と戦を始めて数年。その勢いは徐々に増して行きついには規模を逆転した。
楚王項羽を垓下城へと押し込んでこれを攻囲、その陣は幾重にも及んだ。
守る楚軍は攻め寄せる漢軍の陣営四方から、懐かしい楚歌が聞こえてくるのを不思議に思う。
城壁に上って周囲を良く見てみる、そこには既に降った楚人の多くが涙して歌っている姿があったのだ。
楚王は産まれてこの方ずっと側近として用いてきた、会稽軍旗本八千騎と数万の軍兵を抱えていたが意気消沈してしまう。
さりとて命を永らえさせ、いまさら尻尾を丸めて会稽に逃げ帰ってどうなるのだろうとも。
そんな中、楚軍は脱走兵が続出して戦う意思を残しているのは旗本のみとなってしまった。
城内では他人の目を気にし、隙あらば離脱しようと窺う者多数。敵として在るよりも厄介とも思えた。
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