四面皆楚歌する

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 草原の中心で周囲を見回す、敵敵敵……どちらを向いても全てが漢の兵士ばかりであった。  敵意に殺意、そこに居たのが楚人であっても驚くこともない。 「壮観ですな大王」  武将が隣で話しかけてくる。何万何十万居るのかまったく見当がつかない。蠢く蟻の群れように見えてくる。  恐怖を感じることは無かった。敗けを知らない者がどこまで登り詰めることが出来るか、武辺の極致を歩む彼はどこまでも冷静だ。 「これこそ余が望む場所である。何騎居るか」  ゆっくりと落ち着いて問いかける。国同士の争い、政治や戦争では結果及ばなかった。  目に見えない戦いは項羽の本領と余りにかけ離れ過ぎていた。 「二十八騎で御座います」  側近の誰もが理解し、本人もそれは感じていた。だからと途中で止める選択肢など遥か昔に喪っている。  この場所を用意するために、何千と居た騎兵がに散ってしまった。それも各々が自らが望んで。 「結構だ。これより我々はあの集団に突撃を敢行する、以後一人たりとて脱落は許さん。続け!」  腹の底から声を振り絞る。側近らも大いに応じた。
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