問3

23/49
前へ
/172ページ
次へ
「んで?どこがわかんないの?」 「あ、はい。えっとですねー…ここなんですけど、解説読んでもよくわからなくてー…」 「はいはい、ここ皆赤入ってたもんねー」 私と先生しかいない静かな教室に、二人の声が異様なくらいに響く。 暖房も止められて、寒くて仕方ないのに、二人の間だけは熱いくらいだ。 「皆わかんなかったんでしょうね…」 「うーん、わかって欲しかったんだけどねー…」 数学とは関係のない会話。 驚くくらい心地よくて。 この時間が、永遠に続くんじゃないだろうか。 そう錯覚せずにはいられない。 「他にわからないところはある?」 「はい、えーっと…ありました。これなんですけど、式変形ってこれでいいんですか?」 「ちょっと貸して」 私の手から、先生がワークを抜き取る。 その動作にさえ胸が音を立てる自分はもう異常。 「解答は違うやり方なのかわかんないんですけど、答えは同じなのに途中が違って…」 「うん、これはねー…」 その時。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

278人が本棚に入れています
本棚に追加