問3

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先生の手にある問題集を覗き込む私と、そんな私を覗き込もうとした先生の目が合う。 バチッと音がして、火花が散った…気がした。 そのまま二人の動きが止まる。 「……先生」 「…ん?」 いつもと違う空気が、二人の間に流れる。 そのまま、沈黙。 「……向井さんはさ」 沈黙は先生によって破られる。 「……はい」 「優しいよね…」 「は…」 いきなり出てきたそのワードに、空気が抜けるような声が出る。 「何ですか、いきなり…」 「いや、この1年を振り返ってそう思ったの」 「はは…」 先生が、今までに見たこともないような顔でいるから。 今まで見てきた、教師の顔じゃなくて。 今まで見せたことがない、男の人の顔でいるから。 私の胸が、今まで聞いたこともないような音を立てた。 「優しいって…。皆言うんですよ、『夏乃って優しいね』って。でもそんなことないし…」 「え?今なんて言った?」 照れ隠しに無意識に早口になっていたのだろうか、先生が私の発言を聞き返してくる。
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