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「だから皆、私のこと優しいねって言うって―――…」
「あぁ、“夏乃”って言ったのね」
自分の名前を出すのが恥ずかしくて、わざわざ言い直したのに。
…って。
「先生」
「ん?」
「私の下の名前知ってるんですか…」
聞き流すことが出来なかった、そのこと。
先生、
私の下の名前も知ってたの―――…?
「知ってるよ」
先生は心なしか得意げに笑った。
「夏乃、でしょ?」
「…ッ」
その言葉と先生の表情が、完全に私の心を射抜いた。
「…同じ名字の子しか知らないのかと、思ってました…」
「え?そんなことないよ」
先生たちはクラスに同じ名字の人がいるとその子たちのことはフルネームで呼ぶ。
私のクラスの生徒全員の顔と名前が一致しているようだった先生は、当然同じ名字の子たちのことはフルネーム暗記してるんだろうなって思ってた。
「……でも」
どうやら、その子たち以外の生徒の下の名前は知らなかったみたいで。
と思うのにはもちろん根拠がある。
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