問3

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「あ、まずい。もう7時だ」 ふ、と時計を見れば、7時まであと10分といったところだった。 「え、ホント」 先生も驚いたように顔を上げ、自分の腕時計を見ている。 この高校の生徒の完全下校時間は午後7時。 先生たちは残れるんだけど、部活動なんかで届け出を出さない限り、一般生徒は強制下校。 「そろそろ切り上げるかー」 ガサガサやり始めた先生に倣って、私も道具を片付ける。 「なんだかんだで終わんなかったね」 「アハ、ですねー…」 そうなのだ。 2時間近く教えてもらったのに、雑談が多すぎてほとんど進まなかったのだ。 「すいません、先生の時間とっちゃって…」 「いやいや大丈夫」 ハハハと笑って、先生は椅子から腰を上げる。 その笑い方がいつもと同じだったからちょっと安心した。 「そうだねー…、じゃあ明日もやろっか」 「うぇ!?」 突然の提案に変な声が出てしまった。
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