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「ん?」
先生の声がした方を振り返ると、先生の後ろに恵理ちゃんが立っていた。
「あの…ワタシも質問していいですか…?」
恐る恐る…といった様子で先生の出方を窺う恵理ちゃん。
「うん、いいよ。どれ?」
先生はあっさり返事をして立ち上がり、恵理ちゃんの席へ向かっていった。
「あ、ありがとうございます…!」
そう言う恵理ちゃんの横顔は完全に恋する乙女で。
心臓が紐で縛られるみたいに、ギュッと苦しくなる。
そちらへ行って楽しそうに話をしている先生の姿を横目に見る。
楽しいか…そりゃ楽しいよね。
美人で頭のいい子と一緒にいて嫌な男の人なんていないだろうから。
「(完全に負けてる…)」
別に勝負してるわけじゃないけど。
負けてる、そう思わずにはいられないよ。
「出来た?」
悶々とした気持ちで問題に向かっていると、恵理ちゃんとの話が終わったのか、先生が再びこちらへやって来た。
「…途中から、わかんなくなって…」
理由もなく、無性に泣きたくなった。
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