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「そっかそっか、どれ?どこからわかんなくなった?」
優しい口調の先生。
荒んだ心は幾分か潤ったけど。
「…ここで…計算が…合わなくなって…」
あぁ、私って嫌な女。
こうやって先生を自分の傍にだけ置いておきたいなんて。
どこにも行かないで。
恵理ちゃんと喋って欲しくもない。
こんなどす黒い感情、知らなかった。
恋をすると、皆こんな風になるの?
恋する乙女は可愛いんじゃないの?
もう、わかんないよ。
「…向井さん?大丈夫?」
先生に声を掛けられて、ハッと意識を取り戻す。
…いけない。
今はこんなこと考えてる場合じゃない。
先生と話せてる今を大事にしなくちゃ…。
「…大丈夫です…!」
無理やりかもしれないけど笑顔を作って。
先生と対峙する。
「向井さんごめん、今日は部活に行かなきゃいけないんだ。だからあと少ししかいられないんだ…」
「そうなんですか…わかりました!じゃあ時間いっぱいまで…」
そうだ、今を大事にしなければ。
そうでなければ、きっと、後悔する―――…。
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