人生最高の失恋

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本当は、怖い。 想いを伝えてどうにかなるの? 何かが変わったりする? 先生と私が両想いになることなんて、あり得る? 恵理ちゃんはこんな恐怖を抱えていたのかと思うと尊敬してしまう。 と。 「あ……」 視線の先。 先生の姿を捉える。 先生はスーツのズボンのポケットに手を入れ、壁に寄り掛かってどこか宙を見ていた。 先生に声を掛けるより先に、胸が締め付けられた。 何で。 何で、ここにいるの? 幸か不幸か、先生を見つけたのは私が先生から飴をもらった場所だった。 あの時のことは、思い出すだけで胸が痛いほどに締め付けられてしまう。 そんな場所に。 何でいるの? 「…先生」 気付けば、自然と先生を呼んでいた。 「え?向井さん?」 私に気付いた先生が、驚いた顔でこちらを見る。 「どうしたの?ホームルームとかは?」 壁から体を離し、先生は私がいる方へと歩み寄る。
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