人生最高の失恋

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と。 「向井さんさー…、あの時あげた飴、食べた?」 「え?」 一瞬訪れた静寂を、先生が破った。 その飴って、模試のご褒美云々の時の飴だよね? 「ええーと…、もらってすぐ食べました」 「そっか」 正直に答えると、先生はクスクスと笑い始めた。 「いやいや、先生が早く食べろって言ったんですよね?」 笑われたことに納得がいかなくて、ムッとしてしまう。 「はは、そうなんだけどさ」 ちょっと、取っておいて欲しかったな。なんて。 先生の瞳が私を捉える。 口元は拳が隠していて、笑っているのかどうなっているのかわからない。 「…ッ……」 もう、やめてよ。 胸がギュッと握りしめられたかのよう。 やめてよ、そういうこと言うの。 期待させたいの? 唇を噛みしめて、込み上げる感情を抑え込もうと努力する。 「…ホント、たった1年だったけど、色々あったね」 そう呟く先生の表情は、俯いていたのでわからない。
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