人生最高の失恋

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先生が私の名前を呼ぶ。 「…なんですか?」 先生が壁に腕をついて、いわゆる壁ドンの体勢になる。 眼鏡越しでない先生の視線が痛いほどに突き刺さる。 「……ッ」 先生が苦しそうに顔を歪める。 それが伝染して私の顔も歪みそうになったけど、必死で笑った。 傍から見れば今にも泣きそうだったと思う。 そうだよ、怖くて、今にも泣きそう。 でも逃げちゃいけない。 受け止めなきゃ、現実を。 「…先生」 急かす様に先生を呼ぶ。 はぁ、と大きく息を吐き出して、先生が私の肩の辺りに顔をうずめる。 といってももちろん、触れてなんていない。 私の顔の近くに先生の顔があるだけ。 もう大丈夫。 先生は優しいから。 きっとこれしか言わない。 「…ありがとう」 予想通り。 「…先生」 先生の名前を呼ぶ。 先生は顔を隠したまま、こちらを見ようとしない。 「…先生。私、先生のこと好きになって良かった」
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