問1

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ヤバイ、心臓うるさい。 昨日先生に聞くと決心し、授業が終わったあとに聞こうと思っていたけど。 時計の針が動いた気がしない。 手汗が酷い。 断られることはないだろうけど、でも断られたりとかしたらどうしよう―――…。 キーンコーンカーンコーン… 無情にも時計の針は進んでいたようだ。 「じゃあ終わりましょう」 先生の言葉を合図に、クラス長が号令をかける。 先生は帰るのが早い。 行くなら今しかない。 問題集を掴んで、勇気を振り絞って。 「先生ッ…」 「ん?」 先生は立ち止まって顔だけ私の方を向く。 「どうした?」 「こ、この問題が分からなくて…」 緊張で震える手で問題集をめくり、例の問題を指で指す。 「あぁこれ?」 先生は私の手から問題集を抜き取り、問題を眺める。 「これね…。うん、放課後聞きに来て?」 「え?あ、はい」 「じゃあ待ってるね」 先生は私に問題集を返すと、教室から出ていった。
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