会いたかったよ、ずっと。

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「…一緒にどこか行きませんか」 「え…」 あどけなさの残る、でもどこか大人びた顔から目を逸らし、ボソリ、呟いた。 彼女――向井夏乃が俺の目の前にいる。 高校講師1年目の年に教えた子。 離任式の日に告白されて以来、ずっと会っていなかった。 …会えなかったんだ。 その彼女が今、俺の前で俺を見つめている。 「…と言いますと」 ポカーンとしている彼女に驚かずにはいられなかった。 え? 「や、わかるでしょ…」 手で顔を覆い、ため息をついてしまった。 ここまで来てそれ以外にないでしょ? 「あれです、デートのお誘いです」 「……」 恥ずかしいけど馬鹿正直に言ってみる。 何で急に鈍感になったの? 「ええ!デート!?」 「し!声が大きい!!」 バッカ!恥ずかしいだろう!? 咄嗟に彼女の口を塞いだ瞬間、手に彼女の唇が触れて、ドキッとした。 ヤバい、これは。
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