会いたかったよ、ずっと。

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代金を払ってコーヒーを注いで、店から出ようとする。 が。 「……」 肝心の人物はカフェオレを手にしたまま呆然と立ち尽くしているばかりで、全くこっちに来る気配がない。 「……おいで」 手招きすると、ハッと気付いたように俺の方へ駆け寄って来る。 「…なんで来ないの?」 疑問を率直に口にすると。 「…なんか、先生と一緒にいていいのかな…って思って」 「……」 はい、出た。 彼女は石橋を叩いて叩いて、でも壊れるんじゃないかとビクビクしながら渡るタイプだ。 …もう、ホントに。 そんなこと、考えなくてもいいのに。 「……」 はぁ、と息をはいて、まだ俺から少し離れたところに立ちすくむ彼女の元へと近づく。 そうしてカフェオレを持つ手を上から包み込む。 「…ッ」 俺の突然の行動に驚いたのか、彼女の体がビク、と小さく跳ねる。 だからといってそこでやめるほど俺は出来てる人間じゃない。
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